硬券とは・・

40代の方は見た事が有るかも知れません。50代以上の方は電車に乗れば、手にした事が有るでしょう。
日本に有る多くの印刷会社の中で、硬券を製造出来る印刷会社は、ほんのひと握りです。その僅かな硬券印刷会社の中で、国鉄時代からの伝統製法を唯一継承しています。デジタル化が主流の現在、あえて古き良き伝統、手間の掛かる味の有る仕上がり、当社はそんな硬券を日本から消え去らない様、こだわりを持って製作しております。

硬券について

  写真は旧国鉄の硬券で、左からA型券、C型券、右上はB型券、右下はD型券です。

硬券とは何でしょうか?

硬券は鉄道会社の乗車券のスタンダードとして、日本の明治の鉄道創業期より使用されていた、厚紙で出来た切符の事です。

ボール紙で出来た材質の切符で、0.7ミリ程の厚紙の切符です。現在の自動券売機で発行する切符とは厚みが全く違い、自動改札機に通す事は出来ません。

厚紙で硬い券ですので硬券と呼ばれております。

硬券には4つの規格サイズが有ります。

A型券「縦30ミリ×横57.5ミリ」

このサイズは券売機でも手にする大きさで、切符としては一番身近な大きさです。57.5ミリなんて中途半端なサイズですが、これには理由が有ります。鉄道の技術は明治に海外より輸入されており、切符の印刷機も同じく輸入されてました。輸入規格サイズが「インチ」ですので「寸」をえて「ミリ」へと直し、最終的に30ミリ×57.5ミリとなりました。「A型券」は正に世界の硬券の基本サイズとなるのです。

B型券「縦25ミリ×横57.5ミリ」

A型券より縦が5ミリ短く、硬券では一番身近な大きさです。入場券や近距離券で多く使われました。B型券は用紙節約の為に考案された大きさです。硬券板紙の断裁前の全紙から取れる枚数は、「A型券」で108枚で「B型券」は135枚です。硬券板紙はパレットに10R(全紙で400枚)を積んでおりますが、「A型券」を「B型券」にするだけで単純計算で1パレットで10800枚も差が出て来てしまうのです。

C型券「縦60ミリ×横57.5ミリ」

このサイズは印刷場からの要請で生産を縮小されたと聞きます。それは製作しづらいからです。C型券以外は長方形ですが、対してC型券はほぼ正方形です。硬券は製造過程での断裁作業で、一部の原紙が90度回転してしまう事がどうしても有ります。回転してもすぐ直せますが、ほぼ正方形の60ミリ×57.5ミリですと、縦か横かの区別が付きにくくなります。C型券は他のサイズと比べて生産効率が悪く、この事から印刷縮小へと導きました。切符でのサイズでほとんどに目にしませんが、食券販売機などの領収書など券売機でも目にする事も出来ます。C型印刷機は民間で当社のみ所有する貴重品です。

D型券「縦30ミリ×横88ミリ」

他のサイズと比べ情報量が多く印刷出来、使い勝手の良い大きさです。生産量は「A型券」「B型券」と比べて少ないですが、指定席特急券等の高額券やお土産目的の観光記念入場券などに多用されました。硬券板紙の全紙から取れる枚数は72枚でしか取れなく、製造量の多い券種としての使用は避けられた様です。

切符としてあまり見掛けないのは何故?

JR各社では乗車券としての役割は既に終えており、一部の特殊な場合と記念切符のみ硬券が使われております。

平成2年度末からJR東日本を皮切りに、自動改札機とPOS端末の導入で硬券の使用は廃止されました。硬券は自動改札機に通せない事が主な廃止の要因です。

連絡切符を発売する私鉄も、それに見習い廃止を進めて来ました。今では一部の私鉄のみで硬券は活躍しますが、機械発券の切符に主役を譲っております。

それでも無くならないのは何故でしょう?

機械発券の切符に主役を譲っても、ローカル私鉄や一部の私鉄ではまだまだ使われております。自動券売機や自動改札機の費用対効果が無い駅や、お土産や収集品として硬券売り続けている鉄道会社も有ります。

また硬券を廃止したJR各社でも、記念切符は硬券で発売する事が多く有ります。
これはSLと同じで、かつて活躍して現在見掛けない鉄道文化遺産なのです。SLが走れば多くの沿線が賑わう様に、硬券も記念切符で発売すると多く売れるのです。

一枚の硬券から観る魅力と製作のこだわりとは・・・
日本で当社しか出来ないもの、他では真似出来ないものがあります。

硬券の素となる板紙からこだわります。 

硬券は乗車券としての役割で登場しました。乗車券はお金に代わる金券であり、偽造防止を求められてます。

例として、お金の「お札」は専用の紙を使用しており、市販の紙を使わない事で偽造防止の大きな役割を果たしております。

当社の硬券も、専用の板紙を製紙メーカーで特注で製造しており、流通経路に載せない様にしております。また紙の成分・重さ・厚みも、旅客鉄道会社線の規定に合わせており、酷似する板紙が少ない事も特徴と言えます。

製造方法は在来工法にこだわります。 

在来工法とは、硬券の本来の製造方法の事です。硬券の印刷は券面を「活版・凸版印刷」で印刷しております。
これは明治期の鉄道開通時に硬券印刷機も一緒にイギリスより輸入された事によります。輸入当時の機械の構造は「活版・凸版印刷」であり、硬券印刷機の構造に技術の発展がほとんど無かった事が要因です。

断裁は専用の断裁機で所定の大きさに仕上げます。
硬券は印刷物の中で非常に小さく、正確な大きさ・大量・素早く製造する為、専用の断裁機は欠かせません。硬券は大変な手間暇を掛けて印刷しております。手間暇を掛けた分、硬券印刷機を持たない印刷会社では製造出来なく、偽造防止に役立つのです。

硬券の機能性としての「孔」開けは、小児用として発売する場合は切り落として発売する等、駅の控えとして無くさない為、ヒモに通す孔です。
裏面のミシンは往復券等に使われておりました。これらは硬券印刷機で印刷と同時に加工しております。機能性を果たしながら、硬券らしさで有るアイテムでも有るのです。

硬券は各サイズ別の専用の印刷機が有りますが、国内の中で現存数が少ないのが現状です。その中でC型硬券印刷機は当社のみの所有で、大変貴重な印刷機なのです。C型硬券印刷機は当社以外に博物館に2台の展示品のみとなります。硬券印刷機を持つ会社の中で、当社が唯一、硬券全規格に対応する事が出来ます。

以上の製造方法にこだわる事により硬券本来のクオリティーと、他では製作出来ない硬券を生み出しております。
今では本来の乗車券としての他に、記念切符や旅の記念の乗車証明書、模擬券に使われる様になり、多くのユーザー様よりご支持を頂いております。